帰り道、陽が落ちるこの時間は、川の上に掛かっている高架線に車両が通ると、いつも吠えている犬がいるんです。同じ毎日は何となく日々の中に溶け込んでいて。だから、「あっ、今日は吠えていないな」って。身体は覚えていて、いつもと違うと気付くんです。けれど、どこで吠えているかなんて気にしていないから。そういう日が何日か続けば、変わる景色の変化が段々と気にならなくなっていくんです。
これって、帰り道に限らず全てがそうだと言えると思うんです。近所で誰かが引っ越していったってそうだし、職場から居なくなっていく人たちの背中を見つめても、次の日には、何事もなかったかのような毎日に戻るんです。
考えることは少ない方がいい。あきらめるんじゃなくて、これは、自分を大切にするため。誰かに毎日を預けていることに疑問を抱いて、違和感を感じる夜のために、アパートのすぐ近くにあるコンビニに寄って、ごまかす材料を探すんです。
玄関の鍵を開けて、街灯で薄暗く見える部屋の中に明かり。眠りに付くときには、カーテンを全部閉めないと明るいんです。元気が出ないときには、カーテンを開けたまま。最近気付いたんです。カーテンが開いたまま、電気を付けないで夜空を見上げるんです。けっこう、空いっぱいに星は輝いていて。すぐそばの街灯から入る光がすごくもったいない。六畳一間の部屋、そんな夜、それでも私は素敵だと思いますよ。そういう毎日。
私、知っているんです。努力して何かを変えたとしても、そんなことは誰も気にしないし、自分も、誰かの頑張ったこと。あんまり、気にしないでしょう?だから、誰かと比較したり、自分がどうかなんて気にする必要はないと言いたいんです。只々、「貴方の人生は美しい。」そんな口に出すには恥ずかしい言葉を心に秘めておいて。
その気持ち、すごく大切にしてほしいんです。そうやって過ごす毎日が、周りの人も自分も、全てを包みこむように生きていくことが出来れば。それだけで、貴方は世界を明るくしているんです。
YouTubeで朗読動画を作りました
AI音声合成技術を用いた朗読音声を利用して、このページの作品を朗読動画にしてみました。