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光と影

適当に生きてきた。有り体に言えば、それは毎日来る日も満員電車に乗ることであり、誰よりも早く会社にいることの価値を押し込まれ、誰よりも遅くまで働くことのそれらを、大人や社会は普通という言葉で片付ける。つまり、世間の人にとっては、それが常識として認識され、その価値観が僕には一番耐えられないものだった。

僕は、自分のことを普通ではない人間だと思っている。これは別に僕の頭がおかしいとかいうのではなくて、今まで異常だと思えるような経験を沢山してきたからである。僕は、そういう体験の中で、何が普通で何が異常なのか、また、普通の人の感じ方と違うのではないかと思い悩んだこともあった。

しかし、どう考えてみても、それはやはり異常なことだったと思う。だけど、僕はその苦痛をそのまま受け入れた。しかし、世間ではそれが普通らしい。誰かががどんなに苦しんでいようとも、そのことをわかってくれる人は一人もなかった。いや、正確には自分の事で常に精一杯だ。誰かを心配するほどの度量を持っている人はおそらくかなり少ないだろう。

次第に世の中が嫌になってきて、僕は厭世的になった。この世のことが全て馬鹿らしく思えてきて、無気力になっていった。世の中がつまらなく思えるようになったからといって、対比して僕の人生が楽しくなったわけではない。むしろ一層つまらないものになってしまったように思えるのではないか。つまり、楽しいことが何一つなくなってしまったというような、ことばにするには冷静、いや見合う言葉が見つからない。

そんな生活で、生きている意味などあろうか? あるわけがない。ただ、何かもう一度、仕事と言う形で何かをしてみたかった。それが起業のきっかけだ。そして、今こうしてここにいる。これを見ればわかる通り、これもひとつの全く平凡でありきたりのことである。しかし、それでいいのだ。

僕は、今まで自分の本音を他人に話したことはない。話しても理解されないことがわかっているからだ。それに、理解されたところで何になるだろう? きっと、理解してくれる人の中には、同情してくれて、一緒に悩んでくれる人もいるかもしれない。でも、大多数の人は何も知らないままで、僕を異常な奴だと決めつけることが分かっている。それならば、最初から誰にも何も言わない方がましではないか。

僕は、他人の心の動きについて全くの感受性や共感性がない。得があるといえば、人と話をしていて、相手が嘘をついているかどうかということをすぐに見抜ける自信がある。しかし、それはあくまでも表面上のことであり、本当の気持ちはわからないし、分かったしてもそれの証明をしようがない。結局のところ、本音を見抜いてしまうという事は、相手の心を覗いているということであって、それをしている限りは相手に好かれるための言葉を選ぶと言うことが難しいままだと分かっている。

人は裏切るという前提に立って過ごしている僕は、多くの人間関係が崩してきた。出来るだけ考えないようにしているが、それでもやっぱり他人は嫌いだし、他人はそもそも自分に興味が全くないことも分かっている。それでも、もしかしたら心のどこかで、自分を理解して欲しいと願っていて、実は誰かに自分を知ってもらいたいのかもしれない。そもそも、本当に自分のことを理解している人間など存在するのだろうか?そんな思考が僕を支えているときがある。

こんなことを考え出すときりがない。だから、もう考える事をやめて、日々の仕事に集中しようと思った。そうすれば、何も考えずにすむ。結局、これが一番の方法なのかもしれない。そうこうしているうちに、あっという間に時間は過ぎていき、今日もまた終電間近となった。僕がいつも乗っている電車には、かなりの人がぎゅうぎゅう詰めになっている。

「これでは会社員だったときと変わらないではないか。」

僕も当然そこに乗り込まなくてはならないのだが、今日はいつもよりも多いように感じる。こんなに混むなら、もっと早い時間に家を出ればよかったなと思った。だが、今更後悔してももう遅い。とにかく、早く駅に着いてくれればいいのだから。

目的の駅に着いた。ドアが開いた瞬間、一斉に乗客が降りていく。しかし、ホームにはまだ多くの人がいて、改札へ向かう階段にも溢れんばかりに人がいる。終電間近のこの深夜に。この人たち全員が全員家に帰るというわけではなく、中にはこれから更に飲み会に向かうのだろうと思われるグループも見かけた。

やっとのことで改札口を出て、駅前にあるコンビニの前を通りかかった時、一人の男に話しかけられた。その男は、年齢的に三十歳くらいだろうか。身長は百六十センチくらいで、少し痩せていて眼鏡をかけていた。見た感じ、真面目そうな雰囲気を漂わせているが、どこか頼りない感じがする。彼は僕に話しかけてきた。

「あのう、すみません」

彼が声をかけてきたので、僕は立ち止まり彼の顔を見た。すると、彼の顔は少し赤みを帯びており、酒の匂いがした。どうやら、かなり酔っ払っているようだ。こんな時間に酔って歩いているということは、彼も会社帰りなのだろうか?それとも、プライベートで飲んでいるのだろうか?いずれにせよ、あまり関わりたくないタイプの人間だと感じた。とはいえ、今日の僕は何の気まぐれか、彼の話を聞くことにした。

なぜ、いきなり声をかけられたのかと言うと、偶然同じ電車に乗っていたというだけの話しらしい。しかも、降りる駅は僕の住むアパートのある駅と一緒だった。確かに、今まで一度も彼と会ったことはないはずなので、本当にたまたまなのだろう。

僕たちは、近くの公園に行き、ベンチに座り話をした。最初こそ、警戒していたものの、僕は警戒心をなくしていた。同世代と想われる人間同士だと話が弾むことを初めてしった。そして、お互いの仕事のことについての話になった。僕は、彼に自分の職業を教えた。といっても、別に隠す必要もないので正直に話した。ただし、会社員ではないということだけは伏せておいた。

話し始めてから三十分ほど経った頃だろうか、ふと時計を見ると、すでに午前二時を過ぎていた。さすがにそろそろ帰って寝なければといけないと思い立ち上がった。その時、急に立ちくらみがして倒れそうになった。何とか持ちこたえて再びベンチに座ったものの、まだ頭がふらふらする。想っているより体は疲れているようだ。

僕は、その症状に覚えがあった。これは間違いなく寝不足というありきたりな生活の結果が生み出したモノだ。そういえば、企業当初から毎日遅くまで仕事をしているため、なかなか誰かと話す機会がなかった。久しぶりの会話だったため、感覚が麻痺してしまったのだろうか? まさかこんなところで倒れるわけにはいかないと思って必死にこらえた。しかし、我慢すればするほど余計に気持ち悪くなるばかりだ。

それでも、僕は思い切って帰ろうとした。その時、男は笑って僕に言うのだ。帰るお金がないから「貸して」ほしいらしい。世間では、お金は貸したら戻ってこないのが世の常だ。それは僕も理解している。何の貸す義理も感じない僕は、その男の申し出を断った。男は十分に酔いを覚ます時間があったので、すでにしらふに近い状態状態だろう。

文章にするにはあまりにも書きがたい罵詈雑言を僕に浴びせ、独り言を話しながらゆっくり歩いて僕のもとを去って行った。少しだけ聞こえた独り言には

「金もってるくせに」

会社員ではなく経営者であることは伏せていたのだが、なんだかよれっぽく言ってしまったのだろうか。とはいえ納得がいかない。経営者だから富んでいるとは限らないのに。企業の表裏は優雅に空を飛ぶ鳥とよく似ている。

しかし、その裏では耐えがたく、自分ではどうにもならない多くの問題を抱えている場合が多い。人はその名前と肩書きで判断をし、無意識の値踏みをしている。それでも、これが当たり前だし常識というのならば、僕はすこしだけ正常な方なのかもしれない。

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著者

複数のブログサイト制作と運営、イラストデザイン、3DCG制作、エッセイや短編小説、私小説などの、色々なコンテンツを制作しています。







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