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これが普通の毎日だという

普通の人生とは何だろう。誰が何を普通と決めたのだろうか、そんなことを考えながら、たまたま始発駅から会社の最寄り駅へ向かう路線の改札口を抜け、下り終点から下りる大勢の人達とすれ違いながら、”次発の発射”と書かれた線の引かれた通りに電車に乗り込む。今日も一日が始まるのだ。

昨日と同じ毎日がまた始まるのかと思うと気が重いけれど仕方がない。そう思いながらも並んで座った車両の端にある席に頭まで寄りかかって、いつのまにか眠りこみ、気がついたら終点。会社の最寄り駅に着くという毎日だ。待つことが出来ない性格の僕には、こんな往復の毎日が似合っているのかも知れない。

仕事を終えて家に帰ってきてからは、ソシャゲで遊んだりネットで仕事に関するニュースを読んだりするだけで1日が終わる。最近は仕事に関する情報を決められた環境以外でアクセスすることが出来ないから、自宅にラップトップがない僕は、オフィスで仕事をする以外に、特に何かすることがあるわけではない。今は「テレビ」がなくて、コンソールのゲーム機器を繋げて遊ぶための「ディスプレイ」があるだけ。気になっていた新作のゲームもそれなりにやりこんでしまったし、何となく気になった本を読んで時間を潰すしかないのだが、今年に入ってから、最近は残業で遅くなったり休日出勤が続き、少し働き過ぎのような感じもある。

もっともこの不況下であろうが、色々な法律もあって、会社が従業員に対して給料を下げるわけにもいかないらしく、僕の給与は据え置きのままだ。そのかわり、流行の●●ハラスメントのように、記録に残らないあの手この手で、売上を上げるためのプレッシャーや固定費削減の知略を張り巡らせる面倒くさい旧態依然、古い考え方から抜けることが難しいのであろう対応はされる。明日に向かう事業成長に1番必要なのは、事業を成功させるための意欲を底上げするための環境作りなのに。

でもそれはしょうがない。そんなことを考えるより、すぐ近くにいる人間にプレッシャーをかけることの方が簡単なのだから。それでも会社の業績が悪いままでは、景気回復の兆しが見えていないこの社会で生き残ることはほぼ不可能だといっていいだろう。最近になって社内の雰囲気が悪くなりつつあるような気がしてならない。その雰囲気の悪さの原因が何であるかはわかるものの、それを口に出すメリットが見えないことに何かが変わる様子はない。「空気を読むことが得意ではない」「人の気持ちを考えることが苦手である」、「自分の感情や考えを相手に伝えることが下手くそであり不器用でもある」といったカテゴライズ。そんなことをすれば、誰かしら何かのネガティブなカテゴライズは簡単だろう。

そんな感覚が、社内全体、上司や同僚の中に増えてきたように思う。それが嫌なら自分で変えていくしかないはず。誰かを変えるならまずは自分が変わらないといけない。それにしても、こうやって考えてみれば考えるほど、「他人を変えることは出来ない」ということが、他人を交えて組織的に現状を変えることの難しさを物語っている。組織の中で生きるということは、自分一人だけでは生きられないことは確かだが、同時に他人の意見を聞き入れることも必要だということを忘れてはいけない。

ただ、スゴく重要なことがあって、それは、誰が言ったかではなく何が正しいかだ。でも何が正しいかを立証するのは凄く難しい。また、それらを聞く事ができる余裕を組織文化が持ち合わせていなければならないという、いくつもの重要な組織文化プロセスがある。こればかりは「縁」によって組織が変わっていく中で偶発的に発生するようなものなのだろう。

しかし、今の時代はSNSが発達していて、セールストーク抜きで組織としての運営であるべき姿を正しく伝えようとする情報発信をしようとしている人もいる。もちろん、情報の受け取り手としては、SNSは匿名性が保たれる場所なので、その真意や事実を確かめる術がないから、自分がリスクをとってそれを検証してみるしかない。しかも、自分がその検証そのものをとれる立場であることも必要だ。

そう考えると、なんだか思考停止できる毎日はとてもすがすがしく楽になっていく気がする。唯一辛いことといえば、たまに腹痛で通勤途中に座れなくなってしまうことぐらいだろう。それでも、通勤電車の中というのは電車の中で眠れる日本といわれるだけあって、意外と居心地が良い場所だったりするのだ。いつものようにホームへ降りる階段へと向かいつつ改札へと向かう人々の群れをかき分けるように歩いて行く。

駅から出るともう会社まではすぐそこなのだが、なんとなく今日はいつもとは違う道を選んでみることにした。遅刻にはならない。「始業20分前に仕事をはじめるための準備をしておけ。」という上司は少し前にいなくなった。いつもと違う景色を見ると気分転換になるかも知れないと思っただけ。そしていつもは通らない道をしばらく歩いていると小さな公園を見つけたのでそこで休憩することにした。

公園のベンチに座って空を見上げると雲ひとつない青空が広がっている。とても気持ちの良い天気だった。このままずっとここで空を眺めていたいような気分になったのだがそうもいかないのだろうなぁと。遅刻にならないとはいえ、それほど朝に余裕があるわけでもない。そろそろ会社に向かわないとまずい時間になってきたようだ。

ベンチから立ち上がり歩き始めることにしたその時、突然みぞおちの下辺りが凄く痛んだ。最近は何とかオフィスの中で時間内に業務終わらせなければいけないし、内容はクリエイティブだ。考えればポンポンとアイデアが出るわけでもない。それでも時間は限られている。割り当てた時間で妥協しなければならないが、それに納得できるのは自分だけで相手のあることだ。

だからどうしても無理をして頑張ってしまうところがあるのかもしれない。そのせいでストレス発散のために食べるものには気をつけるようにしているのだけれど・・・。まぁそんなことはともかく、鞄の中を探ったところ何か事態を変えられるようなモノが無いことに気がついた。どうやら家を出るときに忘れていたらしい。いつもは一通りのセットを用意しているのに。

今日に限って。そう、ビジネスバッグを変えた。普段と違うことをすると割と起きることだ。だからあまり気にせずに出社して仕事を始めることにするのだった。

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著者

複数のブログサイト制作と運営、イラストデザイン、3DCG制作、エッセイや短編小説、私小説などの、色々なコンテンツを制作しています。







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